特定非営利活動法人もりのこえん

記事一覧

もりあそびより

もりのこえんここにあり。

  • お知らせ

もりのこえんの設立趣旨書の冒頭には、こんな言葉があります。

「人はかつて、自然と共存し、自然への畏敬の念を持って暮らしてきました。
自然との共存の中では、家族が助け合い、
地域のつながりがなくては生きていくことはできませんでした。
しかし、文明の発展とともに人々の暮らしは、自然とかけ離れた無駄のない清潔で便利なものとなり、地域の中のさまざまな問題は専門家や行政の仕組みによって解決され、
互いの喜びや憂いに思いを馳せる必要もなくなってしまいました。」

少し前に知り合った女性が、こんな話をしてくれました。
その方は東京で広告代理店に勤めていました。
毎日帰宅は深夜。帰りの電車の窓から見えるのは、たくさんの広告看板です。
一生懸命働いて、そして今度は「買え、買え」と消費を促される。
働いて得たお金は、また何かを買うために使われていく。
「私は何のために働いているんだろう」そう思うようになり、
東京では消費するために生きているような感覚になったと言われていました。
そして、その暮らしに疑問を持ち、東京を離れたのだそうです。

もちろん、都会の暮らしが悪いという話ではありません。
便利な暮らしは、多くの人の努力によって支えられているし、
お金があることで救われる場面もたくさんあります。
ただ、子育ても、介護も、教育も、暮らしのさまざまなことを、
お金を払ってサービスとして受けることが当たり前になった今、
私たちはいつの間にか、「お金がなければ生きていけない」という感覚の中で
暮らすようになったのかもしれません。

そんな中私は、もりのこえんを始めたことで上天花町に出会いました。
里山での暮らしは、最初は知らないことばかりでした。
でも毎日ここで過ごしているうちに、本当にたくさんのことを教わりました。

具体的に何かと言われると難しいのですが、
一番大きかったのは、
めんどくさいこと、
手間暇のかかること、
不便なこと、
効率の悪いことを受け入れられるようになったことかもしれません。

どうやったら人より良いものを手に入れられるか。
どうやったら一円でも多く稼げるか。

そんなことよりも、もっと豊かで、もっと楽しくて、
もっと大切なものがあることを、里山に暮らす人たちが教えてくれました。

例えば、「こんなのがあったらいいな」と思ったとき。
以前の私は、自分の希望に合う商品やサービスを探していました。

ところが上天花では、「こんなのがあったらいいなあ」と思った時
頭に浮かぶのはサービスや商品ではなく、人の顔です。

お隣の福田さんに相談してみようかなあと思っていると、
それが伝わったかのように、福田さんがふらっとやって来ます。
「それなら、こうしたらええよ。」
そう言って、思いもよらない知恵を見せてくださる。
私たちは見よう見まねでやってみて、
翌年には思い出しながらまた挑戦する。
「去年、どうやっていたっけ。」
そうやって試行錯誤を重ねるうちに、
地域の知恵が少しずつ自分たちの暮らしになっていく。

ある日、「最近、西村さんどうしているかな」と思い、
帰り道に家へ寄ってみる。
「お茶でも飲んでいかんかね。」
そう言われて、
時間はないんだけどなあと思いながら「はい」と答える。
西村さんのお茶は、ゆっくり出てきます。
庭を眺めながら待っていると、
さっきまで頭の中を埋めていた仕事や予定が、
少しずつほどけていく。
「まあ、いっか。」
そんな気持ちになった頃、
西村さんが「ついでに庭の木も切ってくれんかね」と言う。
切れ味の悪いのこぎりで汗をかきながら木を切る。
「ああ、さっぱりしたね。」と西村さんが笑う。
その一言で、あー、いい一日だったなと感じる。

こんな時間は、一円にもなりません。
効率だけで考えれば、その一時間働いた方が収入になるでしょう。

それでも私は、福田さんの知恵を受け継ぎながら試行錯誤する時間や、
西村さんとお茶を飲み、庭を眺める時間の方が、ずっと豊かだと感じています。

お金は、もちろん大切です。
暮らしを支え、
不安を和らげ、
子どもの未来の選択肢も広げてくれます。

だから私たちは、
早く結果が出ることや、
収入につながることを優先してしまいます。

そして、時間をかけて育つものや、
人との関わりの中でしか生まれないものは、
どうしても後回しになります。

近所のおじいちゃん、おばあちゃんを気にかけること。
散歩中の親子に「こんにちは」と声をかけること。
PTAや地域活動に参加すること。
友達の子どもを少し預かること。
福田さんから受け取った知恵を、
今度は私たちが子どもたちへ伝える。
誰かから受けた親切を、
今度は別の誰かへ返していく。
どれも、お金にはなりません。

でも、その積み重ねは、
人と人との間をつなぎ、それは実は安心感につながるのです。

そして、効率よく成果を出すことよりも、
地味でも同じことをこつこつ続けること、続くことの方が、
その価値を大きな力にしていけるのだと知りました。

人を育て、地域を育てるのは、遠回りに見える日々の積み重ねなのだと思います。

だから私は、もりのこえんのような営みを、これからも大切に続けていきたい。

効率だけでは測れないものを大切にする人が、
ちゃんと尊ばれる社会であってほしい。

遠回りを笑われるのではなく、
「その遠回りが、人を育てていたんだね」と言える社会であってほしい。

そして、子どもたちが困った時、「困ったら、あの人に聞いてみよう。」と
たくさんの大人や友達の顔が浮かぶような、そんな繋がりが、
たくさんある社会を、子どもたちへ手渡していきたいと思っています。

お問い合わせ

公式LINEでお気軽にお問い合わせください。
保育クラスの諸費用や、体験入園のご案内などは、
入園案内ページをご覧ください。
電話やメールでのお問い合わせも受け付けております。